第13話

匠「さてと………じゃあ、俺はそろそろ行く。大和、隼。身体には気をつけるんだぞ。」



大和「う、うん。ありがとう、父さん。父さんも……身体には………気をつけてね。」



匠「ああ。それと………今日、会ったことは母さんには内緒にしておいてくれ。また面倒なことになると困るからな……。」



大和「あ………わ、分かったよ。『男と男の約束』だね。」



隼「おとこと、おとこのやくそくー!おらも、やまとさとしてるー!やまとさのおっとうとも、おとこと、おとことのやくそくだなー!」



匠「……ははっ。隼は元気いっぱいだな。なんだか俺も元気が出て来たよ。」



隼「んだ!げんきさ、いちばんいいー!やまとさ、げんきだと、おらもうれしいだー!おらも、げんきになるー!」



匠「そう………だな。…じゃあ、俺は行く。二人とも、仲良くやっていくんだぞ。」



そう言うと、父さんは
振り返らずにオレ達の前から
立ち去っていった………。



大和「……………。」



隼「………どしただかー?やまとー。おっとうさ、いないと、さみしいだかー?」



いつまでも見送っていたオレを見て
隼がポツリとそう呟いた。



大和「………いいや。会えただけで………いいんだよ。オレには、隼がいつも側に居てくれている。だから。寂しくなんかはないよ。」



オレはそう言うと、隼の頭を
優しく撫でてやった。



隼「へへー…。おらも、やまとさといっしょだと、さみしくねえだよー。」



少しにやけた顔つきで
隼は嬉しそうに笑ってくれた。



大和「さ、オレ達も帰ろうか……隼。」



隼「んだ!うちさ、かえるべー!おっかあ、まってるだなー。」



大和「……隼、今日のことは母さんには内緒だからな。約束したもんな、父さんと。」



隼「がってんだー!おとこと、おとことやくそくさ、しただもんなー!やまとさのおっとうとー!やまとさと、やまとさのおっとう、おんなじー!だから、おら、やくそく、やぶらねえだよー!」



大和「………えらいな、隼。…じゃあ、ごほうびに、一個だけ『ワガママ』言っていい。…何して欲しい?」



オレがそう言うと、隼はちょっとだけ
顔を俯きながら、こう答えた。



隼「…………『だっこ』さ、してほしいだよぅ………。いいだかー……?」



上目使いで、隼は両手を広げながら
少し頬を紅く染めながら、言った。



大和「そんなことで………いいのか?隼。他に欲しいもんとか、ないのか?」



隼「んだぁ……。やまとさに、『ぎゅー』って、してもらうの、おら、いちばんうれしいだぁ……。」



………オレは、軽く笑うと
隼の身体をひょいと抱き上げてやった。
出会った頃よりも遥かに、隼の身体は
健康に、逞しく育っている。



それは………言わなくても分かる。



この世に一つしかない、『喜び』に。



オレと隼にしか感じられない
かけがえのない『幸せ』に。



代わりになるものなんて、ない。



だからこそ、大切なんだ。



大和「…んっしょっ、と。……寒くないか?隼。」



隼「んだぁ……。さむくねえだよー。あったけえよー。やまとー。」



大和「ん…そっか。オレもだよ……。隼……。」