匠「さてと………じゃあ、俺はそろそろ行く。大和、隼。身体には気をつけるんだぞ。」
大和「う、うん。ありがとう、父さん。父さんも……身体には………気をつけてね。」
匠「ああ。それと………今日、会ったことは母さんには内緒にしておいてくれ。また面倒なことになると困るからな……。」
大和「あ………わ、分かったよ。『男と男の約束』だね。」
隼「おとこと、おとこのやくそくー!おらも、やまとさとしてるー!やまとさのおっとうとも、おとこと、おとことのやくそくだなー!」
匠「……ははっ。隼は元気いっぱいだな。なんだか俺も元気が出て来たよ。」
隼「んだ!げんきさ、いちばんいいー!やまとさ、げんきだと、おらもうれしいだー!おらも、げんきになるー!」
匠「そう………だな。…じゃあ、俺は行く。二人とも、仲良くやっていくんだぞ。」
そう言うと、父さんは
振り返らずにオレ達の前から
立ち去っていった………。
大和「……………。」
隼「………どしただかー?やまとー。おっとうさ、いないと、さみしいだかー?」
いつまでも見送っていたオレを見て
隼がポツリとそう呟いた。
大和「………いいや。会えただけで………いいんだよ。オレには、隼がいつも側に居てくれている。だから。寂しくなんかはないよ。」
オレはそう言うと、隼の頭を
優しく撫でてやった。
隼「へへー…。おらも、やまとさといっしょだと、さみしくねえだよー。」
少しにやけた顔つきで
隼は嬉しそうに笑ってくれた。
大和「さ、オレ達も帰ろうか……隼。」
隼「んだ!うちさ、かえるべー!おっかあ、まってるだなー。」
大和「……隼、今日のことは母さんには内緒だからな。約束したもんな、父さんと。」
隼「がってんだー!おとこと、おとことやくそくさ、しただもんなー!やまとさのおっとうとー!やまとさと、やまとさのおっとう、おんなじー!だから、おら、やくそく、やぶらねえだよー!」
大和「………えらいな、隼。…じゃあ、ごほうびに、一個だけ『ワガママ』言っていい。…何して欲しい?」
オレがそう言うと、隼はちょっとだけ
顔を俯きながら、こう答えた。
隼「…………『だっこ』さ、してほしいだよぅ………。いいだかー……?」
上目使いで、隼は両手を広げながら
少し頬を紅く染めながら、言った。
大和「そんなことで………いいのか?隼。他に欲しいもんとか、ないのか?」
隼「んだぁ……。やまとさに、『ぎゅー』って、してもらうの、おら、いちばんうれしいだぁ……。」
………オレは、軽く笑うと
隼の身体をひょいと抱き上げてやった。
出会った頃よりも遥かに、隼の身体は
健康に、逞しく育っている。
それは………言わなくても分かる。
この世に一つしかない、『喜び』に。
オレと隼にしか感じられない
かけがえのない『幸せ』に。
代わりになるものなんて、ない。
だからこそ、大切なんだ。
大和「…んっしょっ、と。……寒くないか?隼。」
隼「んだぁ……。さむくねえだよー。あったけえよー。やまとー。」
大和「ん…そっか。オレもだよ……。隼……。」