佳奈「…………よし、っと。だいたい出来たわ。後はあの子達が帰ってくるのを待つだけ、ね。……でも、今日は何時もより遅いわねぇ……打ち合わせが長引いてるのかしら。」
私は時計を見ながら
ふと、独り言を呟いていた。
大和が、頑張ってくれているおかげで
以前よりも生活は安定して
私にも出来ることが増えた。
…大したことではないのかもしれない。
当たり前のことなのかもしれない。
でも、これが毎日出来ることで
少しでもあの子達の笑顔が
見られるのなら、それでいいの……。
それは……私にだけ
感じられる『幸せ』なのだから……。
大和「ただいまー!母さん。」
隼「ただいまなのだー!おっかあ!」
玄関の扉が開いて、大和と隼が
元気よく帰ってきた。
隼が、大和に抱っこされながら。
佳奈「お帰り。大和、隼。今日は何時もより遅かったのね。原稿、大丈夫だったの?何度もやり直していたみたいだったけど。」
大和「あ……う、うん。原稿はなんとかあれで大丈夫だったよ。母さん。……ん!?んんっ?この匂いって………!?」
大和が鼻をヒクヒクさせながら
すごく嬉しそうな顔をしている。
佳奈「ふふ……。今日は『いつものやつ』じゃないわよ。さ、二人とも手、洗ってらっしゃいな。すぐ作るから。……あらあら、隼、いいわねえ。大和に抱っこしてもらってたの?」
隼「んだー!やまとさに、だっこしてもらうの、おら、うれしいだよー。おっかあー。」
隼はニコニコしながら
すごく幸せそうにしていた。
大和「も、もう降ろしてもいいか…?隼。家、着いたから。」
隼「んだー。ありがとだよー。やまとー。」
大和は隼をそっと下ろすと
少し疲れたような表情を浮かべていた。
…あらあら。少しは身体も
鍛えなきゃいけないわね。
デスクワークばかりだから……。